双子ママ研究者の研究・育児日誌

文系の女性研究者(特別研究員PD)のブログです。 出産して双子の女の子のママになりました♡育児と研究の両立に奮闘するなかで思ったことを書いていきます。

学振申請書の攻略法

学振RPDの採用内定に大喜びし、お盆明けまでは自分がまだ専任講師になったわけではないという厳しい現実を忘れて喜びに浸ってしまおうと思っている今日この頃。学振はDC1の不採用以来、DC2、PD、RPDはシームレスで採用された、ということで、お盆明けまでの期間限定で調子に乗っている勢いにまかせて学振申請書の攻略法を忘備録の意味も込めて少し記しておきたいと思います。この手の記事やブログはゴロゴロあるので、あまり書かれていないようなことを書きます。院生の頃からたくさんの学振書類(採用&不採用)に触れてきたなかで思ったことです。ちなみに私は文系なので、文系視点が強い内容だと思うのでご了承下さい。

書き方として、そもそも論であるテーマの斬新さや重要さを除いて、今の私が一番大切だと思っていることは申請書を1つの物語を作成する気持ちで書くことです。現在の研究のはじまりから、今後の研究計画の最後まで、話を一貫させることはもちろん、はじめから最後まで申請書に目を通す上で話がブツ切りにならないことです。当たり前のことのようですが、これができていない申請書は本当に多いです。話が行ったり来たり、あっちに行ったりこっちに行ったり、唐突すぎたりしているのです。おそらく、書き手が重要だと思っている内容が申請書作成時に溢れてしまっているような状態なのだと思います。しかし、せっかくおもしろい研究でも、ストーリーが組み立てられていないとわかりにくいです。読み手の頭の中にストンと落ちないのです。読み手が書き手の意図をくんでくれることを期待するのではなく、書き手が読み手に配慮すべきです。もちろん、専門外の人が読んでも分かる文章で書くことは言うまでもないことです。これは面接でも同じです。

続いて精神論ですが、自分の申請書が絶対に受かるという気持ちで書き、自分の研究はすごい研究なんだと信じることです。書く前から、今年は不採用Aにはなりたいとか、あまり期待はしていないけど…というようなことを言っている人に何人か会いました。特にPDは一発では無理だろうという声を聞きます。その考えは申請書に取り掛かる前に捨てるべきです。そういう考えを持っていたら、本気で採用を狙っている人の生き生きした文章にはかないません。これと一部関わることですが、自分の研究を過小評価することで、厚み・将来性を感じられない申請書になることは避けるよう努めるのがいいと思います。こじつけはいけませんが、自分の研究がいかに広く深くアカデミズムに貢献するかを自信を持って明記することが大事だと思います。これは学振の審査基準にも通じることです。

最後に、学振申請書を読んでいると、私のような脆弱な若手にさえ、この申請書は採用圏にあるか、落ちそうか、だいたい想像がつきます(自分の申請書には私情が入ってしまうので効力がありませんが…)。とにかく、申請書にたくさん触れたことのある人、学振採用者、科研費採択者、審査員経験者、指導教員など、申請書に知見のある人に「あとは運だね」と言ってもらえるような申請書を目指すことです。身近な研究者にさえ認めてもらえない申請書が採用されるのは難しいと思います。学振は「当たる」ものでもあるので、運だけはどうにもならないのは事実ですが。また、たくさんの人に見てもらいすぎると混乱するのも確かなので、私は申請時には、信頼できる方2人に見てもらいました。DC2の時は学振に強い教授に「期待していいと思う」と言っていただきました。PDは海外活動中のため、RPDは育児のためにバタバタで、申請書を一度添削してもらっただけで提出前に最終版をチェックしてもらうことができませんでしたが、両申請書とも、後日指導教員よりいい反応をいただきました。学振申請書を山ほど見ている方の反応はかなり現実的なものとして受け止めていいのではないでしょうか。

ちなみに、私はまだ学振しか手をつけていないので、若手ABや基盤研究などの科研費のことは詳しくは分かりませんが、先日先輩からいただいた若手Bの採用申請書を拝見すると、学振との共通点はかなりあると思いました。以上、一個人の考えですが、学振を目指す方のご参考になれば幸いです。

私は大学卒業後、社会人を2年経験していますが、一般企業に比べて研究者業界はかなりブラック、あるいは超格差業界だと思います。その研究者業界で院生時代から一定の給料をもらえる学振は、奨学金という名の多額の借金を抱えないための命綱にさえなります。博士号取得後も、雑務に追われることなく自由で主体的な研究の機会を与えてくれます。研究費も与えてくれ、思いっきり研究ができ、業績も増やせます。保険や雇用証明や副業禁止等の問題を抱える学振が、ブラックな研究業界のギリギリなものを支えている側面があることがすでに超ブラックなわけですが、それだけではないと思います。子どもを望む共働き女性の場合、出産後に時短・退職・転職など仕事において不本意な状況に追いやられ、第一線から遠のき、子どもがある程度大きくなったときには以前のような働きが無理ということがよく起こるこのご時世。仕事復帰しても幼い子持ちゆえの事情により、肩身の狭い思いをする女性が多いこのご時世。学振は(保育園にさえ入れれば…)女性研究者にそのような状況を避ける可能性を与えてくれます。そして、いろいろあるけれど、研究者は自分の好きな研究を仕事にできる素晴らしい職業だと思います。その業界で生き残ることができたなら、研究を愛する者にとっては本当に幸せなことだと思います。