双子ママ研究者の研究・育児日誌

文系の女性研究者(特別研究員PD)のブログです。 出産して双子の女の子のママになりました♡育児と研究の両立に奮闘するなかで思ったことを書いていきます。

保育士さんへの感謝

私はまだ専任教員にはなれていない任期付きポスドク研究者です。研究者の世界ではトップの方さえで専任教員になるのは30代半ばくらいです。私は旧帝大の博士号所持者ではないので、もっと厳しい状況のなかにいます。旧帝大の方でさえ、専任教員になる前に子どもを持つことははばかられるくらい研究業界は競争が激しい世界です。そんな状況が分かった上での妊娠・出産。研究をあきらめたくなかったけれど、どうしても子どもがほしかったのです。

妊婦健診で子どもが双子だと分かった瞬間は本当に戸惑いました。専任教員でない方で子どもを持たれている数少ない方のほとんどは、お子さんが1人です。2人を育てながら研究が続けられるのか、不安で不安で仕方がありませんでした。

それでも妊娠中から2人への愛情が湧いてきて、エコー写真はかわいくて仕方がなかったし、胎動は愛おしかった…ずっといっしょにいたいと思いました。でも、研究を捨てることはできませんでした。

雇用証明書が出ず、保活に失敗する確率の高い学振特別研究員であったため、そして、妊娠・出産・育児でのブランクがキャリアからの離脱と直結しかねないポスドクという身分のため、出産1週間前まで研究をしていたし、妊娠中から保活をしました。双子を身ごもりながらの保活は、身体的に本当にしんどかったです。そしてまだ見ぬ我が子を出産前から預けるための活動をすることで、何度も何度もいたたまれない気持ちになりました。

幸い保育園が決まりました。本当に幸運でした。しかし、0歳から子どもを保育園に預けるということはとても辛いことでした。研究者になることが夢です。でも、小さい頃から子どもが好きで、お母さんになることは幼稚園のときからの夢でした。自分を責めるし、悲しいし、寂しかったです。

そんな気持ちのまま、保育園の入園式を迎えました。子どもたちの泣き声、叫び声でカオスのセレモニーが終わり、クラス担任の方々やクラスメイト、そのご両親の方との顔合わせがありました。

担任のA先生には1歳と0歳のお子さんがいらっしゃって、今年から子どもを保育園に預けられて職場復帰されたそうです。


A先生はおっしゃいました。

 


私も幼い子どもを預けてます。だから、自分の子どもと同じくらいのみんなの担任をできることが幸せです。自分の子どもが保育園でこんなふうにしてもらっていたら嬉しいな、と思うようなことを、みなさんのお子さんの保育でさせていただければと思います。

 

 

私はこの言葉を聞いて涙が出ました。保育園に預けたら親が面倒見るほどには保育ができないのは当然です。保育士の待遇や重労働の問題など、いろいろと注目されるようになってきています。保育士の方々が疲れたなぁ、今日はしんどいなぁ、とかいろいろ思う日があって当然です。でも、そんなことを考えていたなか、この言葉は心の深いところに染み込むように響きました。あぁ、この方は本当に子どもが好きな方なんだ、と理屈抜きに思いました。もう1人の担任のB先生もとても穏やかなかわいらしい方でした。なんだか安心しました。

保育園の送迎のたび、担任の先生とは子どもの情報を交換します。今日は双子がどうなふうだったか、どんなことができるようになったか、本当に楽しそうに嬉しそうに話して下さいます。双子それぞれの子の個性や性格も深いところまで把握してくださっています。双子のうち1人の子が、静かにストレスをため込むところがある子なので当初心配していましたが、今ではここまでしっかり見てくださる方になら安心任せられると思うほどになりました。

双子の1人が下痢のため、オムツかぶれがひどかったときは、見ている方が辛くなってしまって大慌てで「今日も仕事がありますが、自宅でできるんです。だから1人だけ預けて、この子は自宅で面倒みます。かなりこまめにオムツチェックしないといけないので、そんなこと頼めない…」と伝えると、「大丈夫ですよ、お母さん。かぶれは痛そうですけれど、機嫌もいいし元気です。今日は沐浴もしますし、オムツもこまめにチェックしますよ。もしよかったら安心して預けてもらえませんか。」と力強い言葉をいただけました。その言葉に安心して預けさせていただいたのですが、本当にこまめにオムツの状態を見てくださって状況はかなり改善されました。やるべき仕事があったので本当に本当に助かりました。

他にもいろいろ感謝することはたくさんあります。保育園に預けることにネガティヴなイメージがありましたが、その保育士さんのおかげで共同養育をしているような前向きな気持ちになることができました。子どもたちに愛情をいっぱい注いでくださっているのも伝わってきて、本当に嬉しい気持ちでいっぱいになります。

待機児童問題とセットで保育士の待遇の悪さが問題視されることで、その改善が大々的に要求されるようになってきました。これはこれで非常に重要なことです。

しかし、私のような子どもを保育園に預け、保育士の方に救われているような立場の人間からすると別に言いたいことがでてきます。待機児童問題も重要ですが、待機児童問題がたとえなかったとしても、まず大前提として、保育士という職業は本当に尊い職業だということがもっと認識されるべきだなと思うのです。預けはじめてまだ3ヶ月の私が、すでにここまで救われていて、子どもたちにも愛情をとても注いでくださっている保育士さん。尊くかけがえのない存在です。もちろんここまでの方ばかりだとは思っていません。しかし、この職業自体のすばらしさは明らかに軽視されています。だからこそ、待機児童問題を解消するために保育士の待遇を改善するのであって、保育士の待遇が不当だから保育士の待遇を改善しているわけではないのです。第一この不当さのため、保育士の労働環境や条件が悪いわけで保育士不足にだつてつながるわけです。この風潮は根深く、すぐ変わることは難しいと思われます。だからこそ、少なくとも私は一保護者として保育士の方々を尊敬し、感謝の気持ちを抱いたときはどんどん伝えていきたいなと思います。